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クライアント企業やお客様に対して、最初に相談できる人であり、最後まで残ってくれる人でありたい - 江黒社会保険労務士事務所代表 江黒 照美<後編>

国家資格として独占業務も有する社会保険労務士である江黒さん。プロフェッショナルとして仕事を推進するために、他のプロフェッショナルの仕事に触れることで学びがあったのだそうです。江黒さんの働き方や考え方を、前編と後編に分けて紹介します。

業界や業種が違う「あの人」の話を聞いてみませんか。面白い話が聞けるかもしれません。隣のビルで働いているあの会社の人、電車に乗っているこの人のこと。よく知らないだけで、仕事の価値観が合うのかもしれません。

remonade mediaでは「話をしたことのない人の話を、隣で聞いてみる」ような記事をお届けします。コーヒーでも飲みながら読んでみてください。

「記事を読んで、あなたの考え方を変えるきっかけにしてください」なんて、言いません。あなたにはあなたの信念があるから、変わらなくてもいいんです。でも人の働き方を知るときっと、自分のワークスタイルとライフスタイルを考え直すいいきっかけになります。


今回働き方を教えてくれたのは、江黒社会保険労務士事務所 代表の、江黒 照美さんです。

国家資格を有している人は、周囲から尊敬を込めて「先生」と呼ばれます。弁護士の田中先生、税理士の鈴木先生という具合に。江黒さんも「江黒先生」です。

しかし彼女が顧問を務めるクライアントによっては、従業員たちは親しみを込めて「テルさん」と呼びます。とてもカジュアル!そして彼女の元には自然と相談事が集まります。

ただしクライアントによっては「江黒先生」と呼ばれるところもあり、会社の雰囲気に応じて呼び方も違うのだそう。この距離感の取り方も、江黒さんの強みです。

江黒さんのお仕事内容や普段の心がけなど、話を伺いました。


前編はこちら>>>🍋


🍋服装のこだわりは、クライアント先に合うもの

社労士はスーツを着る人も多いですが、スーツを着ていることで「距離を感じる」と思われるクライアントもあるため、クライアント先に合う服装をするように心がけています。

呼び名もそうですね。先生と呼ばれるクライアント先もありますが、さすがにジーンズにTシャツで行くのに「先生」は相応しくないですよね(笑)

クライアントにより業務範囲は違いますが、「テルさん」と呼んでくださるクライアントでは、社員さんたちが不安なく仕事に集中できる環境を作るお手伝いをすることですので、話しかけてもらえることが自分に求められていることであり、身近に感じてもらえなければ意味はないと思っています。

私は3年ほど前まで、化粧せずいつも黒い服を着て、特に身だしなみを気にかけていないというか、「黒だからTPO的には問題ないでしょ?それより外見磨く時間があるなら中身だよ中身」と本気で思っていました。

そんな時、たまたま某大手企業様から就業規則のお手伝いの話をいただき、(面と向かって非難され嫌がられるようなことは全くありませんでしたが)仕事が完了した際に、役員さんの1人から「正直、最初はあなたに任せて大丈夫だろうか?と思っていたけれど、あなたに頼んでよかったよ」と伝えられました。これって、普通に受け取ったら褒め言葉なのかもしれません。でもその時の私には衝撃的で。業務云々の前に存在そのものが疑われていることに38歳で気づき、とても焦りました。


今は、お客様に聞いてもらえるように、安心してもらえるように、そのために身だしなみを整えることは大事な仕事の一部だとわかるのですが、当時は能力がないのを言い訳するみたいで、身だしなみを整える=着飾るように思えてしまって、非常に抵抗感がありました。

その時に、外資系保険会社勤務の知人とランチをする機会があって、ちょうどその話になりました。彼女に「なぜそんなにかっこいいの?」と質問をしたら、「自分もそうだった」「いい人がいる」と魅せ方コンサルタントの女性を、紹介されたというか、気づけばアポイントが設定され、会う日時が決定していました。

魅せ方コンサルタントの女性との時間は、一言で言うと「強烈」。

「似合うものを着ないとお客様に対して失礼。きちんと着たら、お客様の層が変わる」「あなたに似合う色は今着ている色じゃないの。『黒だから問題ないでしょ』って選んでいること自体が失礼なことなの。『失礼じゃないでしょ?最低限のTPOを、守っているでしょ?』というスタンスで身だしなみに向き合うのは、会う相手のことを考えてなさすぎ。すごく失礼」「相手の会社に対してどんな服装で行くべきなのか、相手の会社で誰と話をするのか、という視点を持って『同じ空間に居れそうな人』にならないといけないの。」

全ての言葉が、今の自分を作ってくれました。自宅にいるときは相変わらず気を抜きすぎていますが、外に出る時の身だしなみは「相手との時間を楽しみに準備する。自分のためのことのようで、相手への配慮」と考え方が変わりました。

「人には、アドバイスを受けるタイミングや言われ方があるんだろうな」ということにも気がつけました。抵抗感があることでも、人はタイミングが合えば動くことができる。その人の中でピントが入る時を見つける大切さ。

私はよくクライアントの方に「心のピントが合うタイミングやキーワードを見つけるのが得意だ」と言っていただけるのですが、こういう経験があるからかもしれません。


🍋専門家に任せることの大切さ

また、この経験を通して「洋服選びはブランドや値段ではなく、自分に似合う色や形を追求すること」の大切さを学びました。そして、変わりたい時にプロの仕事を受けることも大切なのだと知りました。

もちろん申し込んだ時は「えー!高い。そのお金があったら別の素敵なものが買えるじゃない」と受講日当日まで後悔していましたが(笑)、プロになりたければ、今の自分にとって「ありえない」と思うような高い金額のプロフェッショナルの仕事を自分が受けてみることも「『ありえない』が当たり前になるため」に、大事なことだったのかもしれません。

なんとなく違和感を感じたときに違いを気づかせてくれる、背中を後押ししてくれる、自分が進む次の一歩を照らしてくれるのは、単なる詳しい人ではなく、プロだからこそできること。お客様にとってそんな仕事を私も提供したいと思っています。

(可愛くて、つい買ってしまったのだそう。ドラえもんも、のび太くんを導くある種のプロフェッショナルロボットです。)


🍋お客様に還元できることを考える

社労士としてお仕事をいただき、いまでこそ頼っていただいていますが、周りの方にはいつもご迷惑をおかけしてばかりだと日々恐縮しています。私は大学を出ていませんし、個人事務所ですし、手も回らないことも多く、失敗が続くと「自分なんかが担当しているからかもしれない」と落ち込むこともたくさんあります。ただ常に心に決めていることが2つあります。

1つ目は「人間だから失敗するのは仕方がない。ただ嘆くのは自己満足。嘆くくらいならお客様に還元できることを考える」こと。

2つ目はクライアント企業やお客様に対して、最初に相談できる人であり、最後まで残ってくれる人でありたいと思っています。「最初に相談できる」ということはつまり、まず困った時に思い出せる存在であり、質問するのもこわくなくて、思い出したときに「あーうちには先生がいてくれた」「いてくれるだけで心強い」と安心していただけること。そんな社労士になりたいという目標があるせいか、社労士になって12年経ちますが、いつまで経っても未熟だと思う毎日ですね。


🍋こだわりは、こだわらないこと

仕事についてこだわりはありません。こだわりは、こだわらないこと、でしょうか(笑)。

例えば、社労士の先生によっては、クライアントに対して「私と同じ給与ソフトを使ってください」とリクエストをしたり、就業規則などを作るときは「自分が作った雛形をベースに、カスタマイズさせてください」と提案することも多いと聞きます。その方が社労士自身顧問先すべてを把握でき、法改定の対応やトラブルが起きたときのアドバイスがしやすいからです。

ただ私は、(給与についてはほとんど受けていないという事情もありますが)クライアント企業側が導入している給与ソフトを使います。就業規則を一から作る場合でもそのクライアント専用に作っています。望むことが同じ場合は似たものになることもありますが、クライアントのこだわりがはっきりしていると、同じものはどこにもないといえるくらい独特な就業規則を作ることもあります。就業規則は会社のルールブックです。ルールブックだからこそ大事なのは私のこだわりではなく、クライアントのこだわりを形にすること。

それによって起きてしまう問題は、クライアントごとにルールが違いすぎ、何かあるたびに毎回確認が必要なことです。しかしルールを確認することは、就業規則の本来の使い方ですし悪いことではないと信じています。先生ならば全部のクライアントのルールを覚えているのがベストですけどね(苦笑)


🍋大好きなのは、おいしい日本茶

静岡出身なせいか、時々日本茶を飲みたくなります。HIGASHIYAさん、一保堂さん、虎屋さんのTORAYACAFE、PÂTISSERIE ASAKO IWAYANAGIさん。どこもきちんとした日本茶が出るので大好きです。

クライアントの帰りにお茶をいただきながら、考える時間に充てています。こういうぼんやりした時間にも、いいアイデアが出るので大事にしています。

(長く続いている会社の代表「とらや」。とらやさんのおいしい生菓子をお茶と一緒にいただきました。)


🍋お買い物のこだわりは、応援したいかどうか

買い物をするときは、値段ではなく、欲しいか欲しくないか、必要か必要ではないかを考えます。ものについている値段は、その店やブランドが継続をするために決めた価格。「思ったより高い、予算を超えそう」と感じるときは、「自分はまだそれを持つべきタイミングではないのかも」と考えるようにしています。似たような安いものを探す、ランクを下げて買うという選択肢もあまりありません。欲しいと思ったものを欲しいときに買えるように。これはお仕事を頑張る理由でもありますね。

事務所で使っているものは、いつか自分が使わなくなったときでも誰かにお譲りできる、人がもらってくれるわかりやすいブランドを選んでいます。もちろん単にブランドだからだけではなく、長く使うことができて、使いやすいから選んでいますけどね。

(お客様の前で出す持ち物、お客様の目に触れる持ち物などは、「お客様の目に触れるにふさわしいもの」を選ぶ。)


🍋20年後はどうなっていたいですか?

元気でいること。それと自分がたくさんの方に恵まれてきて、とてもとてもお世話になってきたのでそれを自分より若い子たちに返せているといいな。

私、昔から変わった縁をいただきやすいのですが、約20年ほど前に大手企業の労働組合の委員長さんと出会いました。今は亡くなっていらっしゃいますが、大変な時にいつも助けていただき、成長するためのアドバイスをたくさん頂きました。衛生管理者という資格を取得したのも、社労士になったのも委員長さんのおかげ。私がお礼を渡そうとするたびに「今までに自分も周りにしてきてもらったから、それをあなたに返しているだけ。僕じゃなくて次の人に返してね」と言われ、最後まで受け取ってもらえませんでした。

だからこれまでの節目節目で私のことを支えてくださった方々からいただいたものを、私は返す必要があると思っています。そして私が何かすることでもしも「助かったな」と思ってくれる人がいたら、私ではなくその方も周りを助けて、お節介の輪を広げてもらえたらいいな、と。中にはお節介を迷惑に思う方もいるから、必ず善ではないですけれどね(笑)。


ただ、人を助ける、お節介をする。これは自分が不幸だとできません。そして「こんな奴に助けてもらいたくない」と思われるような人であってもできません。20年後にも、人にしていただいたことをお返しさせていただけるような自分でありたいです。


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